2024.10.30 [イベントレポート]
「出演100本目の記念作品に好きなものを作っていいと言われ、すぐに『秋津温泉』を作ることにした」10/29(火):トークショー『秋津温泉』

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岡田茉莉子さん(左)と舟橋 淳監督(右) ©2024 TIFF

 
国立映画アーカイブとの共催企画「TIFF/NFAJ クラシックス 映画監督 吉田喜重」にて『秋津温泉』(1962)の上映後のトークショーが10月29日(火)に行われ、同作で主演と製作を務めた往年の名女優・岡田茉莉子が登壇した。
久々に映画館の場に姿を見せた岡田は登壇後すぐに大勢のお客が入った客席を見て「こんなに多くのお客様に来て頂いてありがとうございます」と言って感極まり涙を流した。
 
公私におけるパートナーとなっていた故・吉田喜重監督と親交のあった舟橋 淳監督が聞き手として登壇し、当時の思い出話などを披露した。『秋津温泉』は岡田の「念願の企画」だったとのことで、「東宝に所属していた時からずっとやりたいと言い続けていたんだけどOKをもらえず、松竹に移ってからも「これは映画にならない」となかなかOKをもらえなかったんだけど、出演100本目の記念作品の時に好きなものを作っていいと言われ、すぐに『秋津温泉』を作ることにした」という。『秋津温泉』の公開は1962年。岡田は当時29歳。この年齢で出演作が100本というのも驚きだが、この時代で女優がプロデューサーを務めることはとても大変だったのでは?と問われると、「スタッフのみなさんがとても協力的でした」と答え、この作品で初めて一緒に仕事をすることになった吉田喜重監督も岡田の意向で当時新進気鋭の監督だった吉田に白羽の矢を立てたとのこと。会社からは吉田はオリジナルしかやらないから難しいぞと言われたが、粘り強く交渉し、結果的にこの作品が吉田監督の代表作の1つにもなった。
 
舟橋から吉田監督の作風について訊かれると「とにかく映画が好きな人でした。そして、とても自由にのびのびと作っていました。吉田の脚本を覗き見たこともあるんですが、カット割りとかそういうことは何も書かれてなかったです。この映画もそうですが、台詞は全然ないのに撮影は延々と撮り重ねることがあって、全部彼の頭の中にあったんだなと思います」と吉田監督の映画監督としての才能がわかるエピソードを披露した。
 
上映会場となった国立映画アーカイブの長瀬記念ホールOZUは「吉田もここがとても好きでした。きっと今日一番楽しんでると思います」というと、会場からは満場の拍手が起こり、再び岡田が涙ぐむ場面も。
 
さらに、舟橋の方からも吉田監督が作った映画会社・現代映画社の作品を国立映画アーカイブに寄贈する話が始まったとの話があるとまた拍手が起こり、岡田も満面の笑みを見せた。
最後の最後まで元気に観客に手を振ってステージを後にした。日本映画の黄金期を支えた往年の名女優はまだまだ輝いていた。
 


 
「TIFF/NFAJクラシックス 映画監督 吉田喜重」は、11月3日(日)まで国立映画アーカイブ2階の長瀬記念ホールOZUで開催。吉田監督の劇映画10本に、貴重なドキュメンタリー映画3本を加えた13作品を全て英語字幕付きで上映。
→上映作品一覧
 
TIFF/NFAJ クラシックス 映画監督 吉田喜重
秋津温泉
監督:吉田喜重、主演:岡田茉莉子
秋津温泉
©1962松竹株式会社
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