2024.11.03 [イベントレポート]
「作品に登場する大きな家は、(亡くなった)僕の祖父が実際に住んでいた家でした」11/2(土)Q&A『くまをまつ』

くまをまつ

©2024 TIFF
滝野弘仁監督(右)、平野 鈴さん(右から2番目)、渋谷いる太さん(右から3番目)、中村映里子さん(右から4番目)、内田周作さん(左から3番目)、松浦りょうさん(左から2番目)、竹内 啓さん(左)

 
11/2(土)Nippon Cinema Now『くまをまつ』上映後、滝野弘仁監督(監督/脚本/音楽)、平野鈴さん(俳優)、渋谷いる太さん(俳優)、中村映里子さん(俳優)、内田周作さん(俳優)、松浦りょうさん(俳優)、竹内啓さん(俳優)をお迎えし、舞台挨拶が行われました。司会は、映画ライター・コラムニストの新谷里映さん(以下:新谷さん)です。
 
 
新谷さん:まずは皆様から一言ご挨拶をお願いします。
 
滝野弘仁監督(以下、監督):この映画『くまをまつ』を監督した滝野と申します。皆さん、お足元の悪い中、来ていただきありがとうございます。
 
平野鈴さん(以下、平野さん):こんにちは。佐伯ややこ役を演じました平野鈴です。本日はよろしくお願いいたします。
 
渋谷いる太さん(以下、渋谷さん):佐伯タカシ役の渋谷いる太です。よろしくお願いします。
 
中村映里子さん(以下、中村さん):こんにちは。中村映里子と申します。佐奈子さんの姉で、タカシくんの母親役をやっておりました。今日は…
 
平野さん:ちゃうちゃうちゃう(笑)ややこの姉の佐奈子で…
 
中村さん:佐奈子役でした(笑)今日は東京国際映画祭でたくさんの映画を上映している中、『くまをまつ』を選んで、観ていただき、とても嬉しいです。ありがとうございます。よろしくお願いします。
 
内田周作さん(以下、内田さん):こんにちは。幸雄役の内田周作です。このような舞台に立てて、これだけの大きいスクリーンで僕たちの映画を観ていただけて、本当に嬉しいです。ありがとうございます。
 
松浦りょうさん(以下、松浦さん):尚美役を演じました、松浦りょうと申します。今日は限られた時間ですが、どうぞよろしくお願いします。
 
竹内啓さん(以下、竹内さん):こんにちは。隆二郎の青年期のリュウという役を演じました。竹内啓です。本日はありがとうございます。よろしくお願いします。
 
新谷さん:まず、監督にお伺いします。この映画には、たくさんのテーマが含まれていますが、 物語が誕生したきっかけや経緯、作品に込めた思いについてお話しいただけますか。
 
監督:はい。作品に登場する大きな家がありますが、一昨年亡くなった僕の祖父が実際に住んでいた家でした。一昨年、1月に祖父が亡くなって、あの家は両親が管理していましたが、住む人間がいなくなってしまって。そこで、この家を使って映画を作りたいというのが出発点でした。
最初、(祖父の家に)泊まり込みで脚本を書いていたのですが、1ヶ月か、1ヶ月半ぐらい泊まり込んで書いていくと、 かなり個人的な話になるなという予感がして。脚本を書きに(家に)来た脚本家という設定で書き始めましたが、どうしても、脚本家が1人で書きに来ただけでは話がうまく進まなくて。結果的に、タカシや他の人たちが訪ねてくる映画になりました。
この作品は、石川県の小松市で全編撮影をしましたが、皆さんもご覧になっていただいたように、石切り場というものがまだたくさん残っています。この映画で映っているものはその一部でしかないのですが、子どもの頃から、山の中にぽっかり穴が開いてるのは、異様に思えていました。そうしたこともあり、若い時から、ああいうもの(石切り場)を使って、いつか何か作れたらなとずっと思っておりました。
 
新谷さん:『くまをまつ』はとてもユニークなタイトルですが、タイトルに込められた作品への思いをお聞かせください。
 
監督:『くまをまつ』というタイトルは、 いつタイトルをつけたのか、僕の中で定かではないのですが…脚本を書いていたのが、実は2年前の夏前ぐらいだったので、その頃にはタイトルあったよね?
 
平野さん:ありました。うん。
 
監督:あったんだけど、まず、「少年がくまをまつ」という設定が、ぱっと思い浮かんで、そこから脚本を書き始めて。どこかのタイミングで、多分書き切る前につけた気がします。「くま」というものが実際の熊なのか、タカシが見たものがなんだったのか。何かこう、この映画自体も、人がいろいろとやってきて去っていく、みたいな。熊に限らずですが、 誰かを待っていたり、主人公自体もずっと受け身だったり、そういう態度みたいなものも含めてタイトルにした気がします。ごめんなさい、はっきりしなくて。
 
新谷さん:俳優の皆さんにもお話を伺いたいと思います。撮影時の思い出や役について、ご自由にお話しいただければと思います。
 
平野さん:監督も言っていたように、ややこは、ずっとそこにいて、人が来るのを待っているんです。なので、本当に素晴らしい俳優の皆さんたちをただ浴び続ける時間だったなと思っています。撮影中は、いろんなことに葛藤し、悩み続けていたので、しんどいのはしんどかったですが、 振り返ってみるととても贅沢な時間だったな、と思います。皆さん、本当に素敵な俳優さんなので、その渦中にいられたのはすごく嬉しいことだったなと思っております。1人1人とも、カメラが回っていないところでも、いろいろ楽しいことがあったので、とても嬉しい現場でした。
 
渋谷さん:撮影の思い出は、トラックの荷台に乗って、森の中を走ったことです。虫もたくさんいて、暑い中、 撮影を頑張りました(会場拍手、笑い)。
 
平野さん:トラックの荷台のやつ、すっごく楽しかったね。ずっと乗っていたい!って思ったよね(笑)。
 
中村さん:最初に、タカシをややこに預けに行くシーンと、迎えに来るシーンの出演がありましたが、監督(の意向)で、 そのシーンはまとめて撮ってしまうのではなく、順撮りにしたいということだったんです。なので、まず、撮影全体の初日に(撮影現場に)行かせていただきました。最初のシーンを撮って、撮影の最終日の前日ぐらいですかね?最後にまた来たのですが、タカシくんが、最初と最後の時を比較して、本当にたくましくなっていたし、とても成長していたのが印象的でした。
 
内田さん:この映画は、ある意味ではふるさとの映画だと思いますが、 出てくる人物は意外と東京出身の設定の方が多いんです。その中で、僕だけ思いっきり地元(小松)の人で、向こう(東京)の言葉がわからないという設定のキャラクターなので、小松独特の言葉を、きちんと話せたらいいなと思って過ごしました。そこで、撮影場所の近辺を歩き回ったり、地元の人と話したりすることが多かったです。
しかも、どちらかというと、ややこに対してもズケズケと(ものを)言うタイプの人間だったので、地元にいる良い兄ちゃん、みたいな空気感が出たらいいなと思って過ごしました。あと、僕だけ撮影現場で本当の熊に会いました(会場内から驚嘆の声)。
みんなが撮影所に行っている時に、 宿舎でぼけーっと待っていたら、向こうの方からガサガサ!って出てきて、「フゴー」という唸り声が聞こえて。どきりとしましたが、熊に逢ったから、この映画は絶対いい結果が出ると思うんです(会場笑い)。
 
松浦さん:役についてですが、 最初、脚本を読んだ時に、正直すごく難しい役だと思いました。ややこに気づきを与える、説得力のある人間でなければいけないなと思ったんです。難しいキャラクターだなと思いました。
ただ、彼女(尚美)と向き合っていく中で、尚美は一見とても強い人間に見えますが、本当は、自分が思っている気持ちを、自分の中でとどめられずに伝えてしまう弱さやもろさがあるなと思うようになりました。そうした人間らしさが、私にはすごく共感できましたし、愛しいな、と思える大好きなキャラクターでした。
 
竹内さん:僕は、最初脚本を読んだ時に、リュウという役は、好きな時に現れて、好きな時に消えていってしまうという印象を持ったので、人物像がすごくボヤボヤしていて。本当に難しいな、と思っていましたが、ありがたいことに1週間半ほど現場にいさせていただいて。空き時間があった時には、撮影中のお家に行ったり、散歩したりという時間があり、多分こういう景色を見ていたんだろうな、と想像する時間を持つことができました。
何より助けられたのは、いる太の佇まいというか…。僕はいる太と2人のシーンが多かったのですが、そこにすごく助けられました。接していくうちにどんどん(渋谷さんが)弟に見えてきて。芝居もそんな風になっていってしまっていたかもしれませんが。 監督がオッケーと言ってくれたので、大丈夫だろうと思っています。素敵な時間をありがとうございました。
 
新谷さん:最後に、滝野監督からメッセージをお願いします。
 
監督:皆さん、本日はお越しいただいて本当にありがとうございます。とても嬉しいです。(これ以降の)公開もありますが、ひとまず、この東京国際映画祭の上映の場がワールドプレミアになったこと、とても嬉しく思います。謎も、よくわからない部分も孕んでいる映画かなと思います。上映後、僕らも表にいます。 皆さんと話をしたいので、ぜひ話しかけてください。本日はありがとうございました。

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