2024.11.03 [イベントレポート]
「わからないものに近づくことが大事と思うし、自分の想像で安易に決めつけるより、わからないものはわからないまま描こうというスタンスでいます」11/2(土)Q&A『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』

ミッシング・チャイルド・ビデオテープ

©2024 TIFF
近藤亮太監督、杉田雷麟さん

 
11/2(土)アジアの未来『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』上映後、近藤亮太監督、杉田雷麟さん(俳優)をお迎えし、Q&Aが行われました。司会は、高崎郁子さん(以下:高崎さん)です。
 
 
高崎さん:本日は、監督のご要望でQ&Aを長い時間行いたいという事で、できる限り皆さんからの質問を受けたいと思います。
 
──Q:派手なBGMや効果音が使われず、観客を驚かせるような表現も少なく感じましたが、意図的な演出か教えていただきたいです。
 
近藤亮太監督(以下、監督):僕が慣れ親しんでいた1990年代から2000年代初頭のJホラーは比較的地味で、 実際に起こる事以外には触れずに次に進むような表現が多かったなと思います。作品を作る上では、そうした、昔のJホラーの要素を一部取り入れたいという思いがありました。併せて、派手な音を出したり、煽ったりという表現を過剰に行わないことで、僕自身、あまり経験はありませんが、心霊体験をした際のリアリティを得られるといいなと思い、これ(完成作品)ぐらいのバランスにしました。
 
──Q:監督は心霊体験をしたことがありますか。また、今回の撮影中に何か心霊現象はありましたか。
 
監督:心霊体験がないこともないと言えますが…今日この場で話すとすごく長くなりそうなので、何か機会があれば公開までの期間にそういう(心霊体験の)話をどこかでしたいなと思っています。もし良かったら、声をかけて聞いていただけると幸いです。撮影中、正直僕は何も感じなかったのですが、何かあったはず。
 
杉田雷麟さん(以下、杉田さん):廃墟で、美琴が腕を掴まれるシーンがありますが、そのシーンを撮った後ぐらいです。撮影現場をそのまま真っすぐ行った先で、脚立か何かがバタンって倒れる音がして。スタッフさん大丈夫かなと思って見に行こうと考えたのですが、感覚的に、どう考えても誰もいないなって思って。まだセッティング中だったので、監督に一緒に確認しに行きませんかと言って、結構な人数で見に行きましたが、何もなかったというのがオチです。聞き間違いではないとは思うんですけど。
 
監督:そうですね。明らかに倒れた音はしたけど、倒れたものはどこにも見つからなかったという話ですね。
 
──Q:敬太と司の関係が、ただの友達にしては絆が深い様に見えて。この2人は同性愛者同士という裏設定があるのではないかと思ったのですが、監督と杉田さんはどの様に考えられていましたか。
 
監督:恐らく、多くの方がそう思っていらっしゃるのではないかと思います。実際に、そうした意図がありました。
僕としては、日本のホラー映画、ホラーに限らずジャンル映画において、登場人物のセクシャリティ、アイデンティティというものが、テーマやストーリー自体に役立ち、機能する形でしか扱われないという事に違和感があるなと思っていたので、本作では、テーマやストーリーには一切寄与しないけど、意図してそのように設定し、スタッフやキャストに対しても説明していました。
 
杉田さん:僕も最初に台本を読んだ時に、同じ様な疑問をいただき、監督に質問しまして、 今のような回答が返ってきました。その後も、僕(敬太)と司はどのように出会って、どのように今まで暮らしてきたのかというのを監督と話し合いながら作っていきました。映画の中で演出であったりセリフで明言することはないけれども、僕(敬太)と司の中ではそのことが前提の人間関係ととらえて演技をしているので、そう思っていただけたのならとても嬉しいし、すごくありがたいです。
 
──Q:時代設定を2015年にした理由は何でしょうか。
 
監督:時代設定を2015年にした理由は、VHSで子どもの頃を記憶しているという事から逆算したことが最も大きい理由です。また、少し過去にする事で観客にとっても「2015年はこういう事をしていたな」といったように記憶に紐づけて過去の出来事を追体験する感覚を与えたいといった意図や、実際に起きた事件と被らないようにしたかったという意図もありました。
 
──Q:藤井隆さんやライスの関町さんといったお笑い芸人の方が複数出演されていましたが、ホラーとは真逆のコメディの方を起用した理由や意図をお聞きしたいです。
 
監督:お笑い芸人の方を起用した理由は、ご縁があり、ご紹介をいただいたからです。私は藤井隆さんのファンですし、関町さんもYouTubeを拝見していて好きでした。そして、お二人は間違いなくお芝居ができるであろうという事と、お二人だけでなくメインで出ている三人も含めて、他の作品では観れないような表情や魅力を自分の(作品の)中で観てみたいなという想いでキャスティングしました。
 
高崎さん:杉田さんにお伺いしたいのですが、VHSをこの映画で扱う前に触った事はありましたか。
 
杉田さん:触った事というか、もはや名前すら知らない状態でした(笑)。VHSとはなんぞやという状態で入りました。
 
高崎さん:初めてVHSの画面を観られた時はどう思われましたか?
 
杉田さん:うーん(少し考えて)これがVHSかという(笑)。
初めて観たのが日向のかくれんぼの映像なので、今、改めてあれが初めて観たVHSなんだなというのを実感しましたが、ホラー向きですね、としか(笑)。
 
監督:怖いな、と思った?
 
杉田さん:撮影された映像がそもそも不気味なので、怖いなとは思いましたけど、あまりVHSということに焦点を当てて、作品を観たことがないので、次はそうした視点でもう一度観ようかと。
 
──Q:実際に存在するものよりも、存在するかどうか分からないものの方が怖いと感じますが、このようなものを使われた監督の意図はありますか。
 
監督:恐らく幽霊にせよ、本作で描いてる様な幽霊とは少し言い難いような何かにしても、西洋だと悪魔とかいろんな名前がありますが、そうしたものは全て、基本的にわからないものに名前を付けていったり解釈していったりする作業だと思います。そうした意味では、ホラー映画を撮る上では、その分からなさというものに近づいていくということが大事なことかなと思うし、僕も自分の想像で安易に決めつけるよりは、わからないものはわからないまま描こうというスタンスでいます。
 
高崎さん:最後に、監督と杉田さんから 一言ずつ最後にいただきたいなと思います。
 
監督:終わった後、少しかもしれないですが、ロビーの方に出るので、もし良ければ話しかけていただければと思います。そして、こちらの『ミッシング・チャイルド・テープ』の感想をFilmarksやXに「#ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」か、「#かくれんぼしよう」と書いていただければ全て間違いなく読みますので、もし良ければ、忌憚なく感想を書いていただきたいと思います。
 
杉田さん:改めて、本日は本当にありがとうございました。僕はこの作品の台本を最初に読んだ時に、ものすごく覚えにくく、それは別にセリフが長いとか独特な表現を使っているとかではなく、読めば読むほど違和感の沼にどんどんはまっていく様な台本だと思っていました。今日観ていただいた皆さんにも、この違和感に少しでも共感していただけたら嬉しいなと思いながら、客席で一緒に観ておりました。 この映画は来年、劇場公開されますが、その時もたくさんの方に共感していただいたり、色々な感想をお聞きしたいので、ぜひ広めていただけると嬉しいです。
今日は本当にありがとうございました。

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