プロデューサーも兼ねた福永壮志監督(左)と音楽を手掛けたOKI
第37回東京国際映画祭Nippon Cinema Now部門出品のドキュメンタリー映画『
アイヌプリ』のQ&Aが10月29日に丸の内ピカデリー2で開催。監督兼プロデューサーの福永壮志と、音楽を手掛けたOKIが登壇し、本作に懸けた思いやかけがえのない出会いについて語った。
北海道の白糠町で生きる天内重樹(シゲ)は、現代人としての日々を過ごしながらも、彼のやり方でアイヌプリ(アイヌ式)を実践し、祖先から続く鮭漁の技法や文化を息子の基樹に伝えている。本作ではそんなシゲ一家の日常を追い、自らのルーツを大事にしながら今を生きる彼らの姿に迫る。
10月28日には、本作に出演している天内重樹、基輝ら親子と共にレッドカッペットを歩いた福永監督。天内親子はアイヌの民族衣装を着用しており、歓声に包まれた。福永監督はそのことについて「僕は正直、人前に出るのがそんなに得意じゃないのですが、やっぱりシゲさんとその息子である基輝くんと一緒に歩くということにすごく意味があったなと思います」と言葉をかみしめる。
本作の音楽を担当したOKIは映画を見た感想を問われると「自分で映画を見てびっくりしました。いろいろなシーンは、僕たちにとっては見慣れたものが多いけど、改めて自分たちの文化を映画で見た時、やっぱり俺たちは日本人と違うんだなと再確認しました」と明かす。
Q&Aでは、動物や魚を食べる際に、感謝を捧げるアイヌの文化に感動したという意見が多かった。福永監督は「僕は監督2作目で『アイヌモシリ』というアイヌについての映画を撮っていて、その中でも少し触れています」とした上で「アイヌの文化は与えられたものに感謝するというものですが、現代生活の中ではお金を出せば肉や魚がスーパーなどで簡単に手に入るから、命の重みを感じることがなくなってると自分でもすごく思っています。スクリーンで鹿の解体シーンなどを、かなり時間を使って見せたのも、そこをリマインドする意味があるんじゃないかと思ったからです」と撮影の意図を明かした。
また、ドキュメンタリー映画以外にも、山田杏奈主演の『山女』や、第76回エミー賞ドラマ部門で作品賞、主演男優賞(真田広之)、主演女優賞(アンナ・サワイ)など最多18部門を受賞した人気ドラマ「SHOGUN 将軍」の7話なども手掛けている福永監督。作品を撮る上で心がけている点として、「人間をちゃんと描くこと。間違った描き方をしたり、偏見を助長するようなことはしない、ということは決めています。もちろん作る上で主観は入りますが、そこからできるだけ離れ、視点を意識して、フィクションだとしてもちゃんと向き合って描くことは気をつけています」と譲れない点を挙げていた。
折しも「ゴールデンカムイ」によって熱い視線を浴びているアイヌ文化。OKIは「今、アイブ文化がブームで、映画も撮られていますし、僕も過去にドキュメンタリーの音楽をやってくれという話をもらいましたが、これまでは全部お断りしてきたんです。なぜかというと、完成した作品を見た時にがっかりすることが多かったので。それらは自分たちを描いてるはずなのに、映画が進行するに従い、監督の視点が強くなりすぎて、見た後に『これは自分たちのストーリーじゃない』と思うことがすごく多かったから。でも、今回の作品や、彼の前作『アイヌモシリ』は自分が役者としても参加しましたが、彼とのつき合いも長くなり、お互いに何を考えてるのかがわかっています。そういう大事な信頼関係で作られた映画なんです。だから『アイヌプリ』はアイヌのドキュメンタリー映画などで、間違いなくNo.1だと今日思いながら見ました」と監督と作品を心から称える。
福永監督は恐縮しつつ「自分にとってはシゲさん一家に出会えたことが本当に嬉しいことだったし、人生の宝物だとも思っています。こうやってOKIさん含め最高の人たちと映画を作れたことが何よりも嬉しいし、それらを作品という形で共有できることも嬉しいです」と感無量の表情で、舞台挨拶を締めくくった。
第37回東京国際映画祭は、11月6日まで開催。
プロデューサーも兼ねた福永壮志監督(左)と音楽を手掛けたOKI
第37回東京国際映画祭Nippon Cinema Now部門出品のドキュメンタリー映画『
アイヌプリ』のQ&Aが10月29日に丸の内ピカデリー2で開催。監督兼プロデューサーの福永壮志と、音楽を手掛けたOKIが登壇し、本作に懸けた思いやかけがえのない出会いについて語った。
北海道の白糠町で生きる天内重樹(シゲ)は、現代人としての日々を過ごしながらも、彼のやり方でアイヌプリ(アイヌ式)を実践し、祖先から続く鮭漁の技法や文化を息子の基樹に伝えている。本作ではそんなシゲ一家の日常を追い、自らのルーツを大事にしながら今を生きる彼らの姿に迫る。
10月28日には、本作に出演している天内重樹、基輝ら親子と共にレッドカッペットを歩いた福永監督。天内親子はアイヌの民族衣装を着用しており、歓声に包まれた。福永監督はそのことについて「僕は正直、人前に出るのがそんなに得意じゃないのですが、やっぱりシゲさんとその息子である基輝くんと一緒に歩くということにすごく意味があったなと思います」と言葉をかみしめる。
本作の音楽を担当したOKIは映画を見た感想を問われると「自分で映画を見てびっくりしました。いろいろなシーンは、僕たちにとっては見慣れたものが多いけど、改めて自分たちの文化を映画で見た時、やっぱり俺たちは日本人と違うんだなと再確認しました」と明かす。
Q&Aでは、動物や魚を食べる際に、感謝を捧げるアイヌの文化に感動したという意見が多かった。福永監督は「僕は監督2作目で『アイヌモシリ』というアイヌについての映画を撮っていて、その中でも少し触れています」とした上で「アイヌの文化は与えられたものに感謝するというものですが、現代生活の中ではお金を出せば肉や魚がスーパーなどで簡単に手に入るから、命の重みを感じることがなくなってると自分でもすごく思っています。スクリーンで鹿の解体シーンなどを、かなり時間を使って見せたのも、そこをリマインドする意味があるんじゃないかと思ったからです」と撮影の意図を明かした。
また、ドキュメンタリー映画以外にも、山田杏奈主演の『山女』や、第76回エミー賞ドラマ部門で作品賞、主演男優賞(真田広之)、主演女優賞(アンナ・サワイ)など最多18部門を受賞した人気ドラマ「SHOGUN 将軍」の7話なども手掛けている福永監督。作品を撮る上で心がけている点として、「人間をちゃんと描くこと。間違った描き方をしたり、偏見を助長するようなことはしない、ということは決めています。もちろん作る上で主観は入りますが、そこからできるだけ離れ、視点を意識して、フィクションだとしてもちゃんと向き合って描くことは気をつけています」と譲れない点を挙げていた。
折しも「ゴールデンカムイ」によって熱い視線を浴びているアイヌ文化。OKIは「今、アイブ文化がブームで、映画も撮られていますし、僕も過去にドキュメンタリーの音楽をやってくれという話をもらいましたが、これまでは全部お断りしてきたんです。なぜかというと、完成した作品を見た時にがっかりすることが多かったので。それらは自分たちを描いてるはずなのに、映画が進行するに従い、監督の視点が強くなりすぎて、見た後に『これは自分たちのストーリーじゃない』と思うことがすごく多かったから。でも、今回の作品や、彼の前作『アイヌモシリ』は自分が役者としても参加しましたが、彼とのつき合いも長くなり、お互いに何を考えてるのかがわかっています。そういう大事な信頼関係で作られた映画なんです。だから『アイヌプリ』はアイヌのドキュメンタリー映画などで、間違いなくNo.1だと今日思いながら見ました」と監督と作品を心から称える。
福永監督は恐縮しつつ「自分にとってはシゲさん一家に出会えたことが本当に嬉しいことだったし、人生の宝物だとも思っています。こうやってOKIさん含め最高の人たちと映画を作れたことが何よりも嬉しいし、それらを作品という形で共有できることも嬉しいです」と感無量の表情で、舞台挨拶を締めくくった。
第37回東京国際映画祭は、11月6日まで開催。