2024.10.30 [イベントレポート]
小田香監督、最新作『Underground アンダーグラウンド』をお披露目 吉開菜央と沖縄のガマなど日本の地下世界を映す
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小田香監督(右)と主演の吉開菜央

第37回東京国際映画祭のNippon Cinema Now部門『Underground アンダーグラウンド』が10月30日に上映され、小田香監督と主演の吉開菜央が上映後のQ&Aに応じた。

この日の上映は、TOHOシネマズ日比谷のSCREEN 12で行われた。15.0×6.2メートルのスクリーンを有する、都内屈指の大劇場でのお披露目に、小田監督は「今後、これ以上大きなスクリーンには見られないかも……」と冗談めかしながら「音の解像度が全然違っていて、以前試写会場で観たよりも振動が大きく感じてうれしかった」と、映像のみならずサウンド面でのこだわりを十分に引き出せたと満足げに感想を語った。

主演の吉開は、「普段は自分で監督して映画も作りますが、本格的に出演したのは初めて。ラッシュの時点では自分にいくつもダメ出ししましたが、完成を見たら、小田さんが大きな胸で私の良いところを引き出してくれた……とドキドキしながら見ていました」と述べる。

本作は、小田監督が3年かけて日本各地をリサーチし、その土地に宿る歴史と記憶を辿り、土地の人々の声に耳を傾け、これまでとは全く異なる撮影体制で、地下の暗闇を舞台に16ミリフィルムで撮影したもの。ドキュメンタリーという枠を超えた構成と映像、迫力ある音響設計で、地下世界を映し出す。

観客から、吉開のセリフがほとんどなかった理由を問われると、小田監督は「彼女が話すというよりも、人の話を聞く、記憶を巡っていくと言う役どころ」だと、設定を説明する。吉開も「最初に小田さんから聞いた私の役名は影。集団意識をナビゲートするような存在で、私が主演と言うよりガマと語り手の方を中心に、私がその空間をどう認識しているかが伝わるよう、いろんなところに行っていた気がする」と、ガマと呼ばれ、沖縄戦での避難所としても使われた洞窟での撮影を振り返った。

米国からの占領を経験しているドミニカ共和国の観客から、日本の若い世代が戦争をどのように捉えているのかと質問が寄せられると、小田監督は「個人の意見で、若者を代表はしませんが」と前置きした上で、「この映画と結び付けるとしたら、沖縄戦を扱っていますが、ガマを案内する男性の語りにもあるように、日本軍も(沖縄の市民に)厳しい態度であったそうです。ですからアメリカだけをどうこうということを扱ったつもりはありません。記憶を扱った映画なので、(本編に出演する)語り部の方も当事者ではなく、当事者が体験したことを語り直しています。そして、自分たちもそのことを映画を通して語り直しているつもりです。こうやってお客さんに見ていただいて、それぞれがこの物語を体に入れていただく、それがこの映画の使命かなと思っています」と回答した。

そして、ダンサー、映画監督としても活躍する吉開とのコラボレーションは、「今回は出演で協力していただいていますが、いつもはクルーでもあり、ご自身で映画も作られるので私の立場もわかってくださっている。心強い友人がそばにいたという感じでした」と述懐する。

吉開は「小田さんの人柄に学びがありました。禅的な心身の在り方というか……NGカットにするものも入れたり、いろんなトラブルも全部引き受けながら、あるべきものがあるべきような形に自己表現していく姿。私も学ばないと、と思いました」と盟友でもある小田監督を称えた。『Underground アンダーグラウンド』は2月に全国公開される。
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