10/29(火)ワールド・フォーカス部門 第21回ラテンビート映画祭 IN TIFF 『叫び』上映後に、ペドロ・マーティン=カレロ監督(中央)、マレーナ・ビージャさん(俳優・右)、ラテンビート映画祭プロデューサー&プログラミング・ディレクターのアルベルト・カレロ・ルゴさん(左)をお迎えし、Q&Aが行われました。
司会:清水プログラマー(以下、清水PG):それでは初めに、ゲストより一言ずつお言葉をいただきたいと思います。
マレーナ・ビージャさん(以下、マレーナさん):私は日本に来ること、そして東京に来ることも初めてです。さらに、東京国際映画祭にこのような形でご招待いただき、大変光栄です。 また、日本の方々がとても親切で温かい歓迎をしてくださったことに、お礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
ペドロ・マーティン=カレロ監督(以下、監督):こんばんは。私も日本に、そして東京に来られて大変嬉しく思っております。私はかねがね日本の映画に大変感銘を受けており、大好きなので、ようやく日本に来られたことを大変嬉しく思っております。
アルベルト・カレロ・ルゴさん(以下、アルベルトさん):今日はお集まりいただきありがとうございます。私のご挨拶は短めにします。皆さん方は今日のゲストの方々のお話を伺いたいと思ってらっしゃるでしょうから。
早速、俳優のマレーナ・ビージャさんに質問です。この映画に出るきっかけ、いきさつを教えてください。このキャラクターは、マレーナさんをイメージして書かれたと伺っております。その点についても教えてください。
マレーナさん:実は、2年ほど前にオーディションを受けましたが、ホラー映画はあまり好きではなかったので、正直に言うと決して乗り気ではありませんでした。通常、俳優がオーディションを受ける場合は、映画の全体像は全く知りません。 短いシーンだけをもらって演じるのですが、その部分を読んだかぎりでは、この役はあまり良い行動をしていないと感じて、そうした部分からイメージを広げるようにしました。また、そうした意味で観客からはあまり好かれないキャラクターかなと考えながら演じていました。
そこで、私自身で少しアレンジを加え、イノセンスな感じで演じてみたところ、ペドロ監督と脚本家(イサベル・ペーニャさん)に大変気に入っていただき、わざわざ私のために役どころを書き換えてくださったんです。書き換えられた脚本を読ませていただいたところ、本当に素晴らしい仕上がりで、私も大変嬉しく思いました。
アルベルトさん: 実は本日いらした、監督のペドロ・マーティン=カレロさんは、私と同じ名字なので大変親近感を感じていますが、作品も素晴らしかったです。一緒に脚本を書かれたイサベル・ペーニャさんについて、皆さんもご記憶にあるかもしれませんね。2年前にこの東京国際映画祭で最優秀男優賞、最優秀監督賞、そして東京グランプリを受賞した作品『理想郷』(TIFF上映タイトル『ザ・ビースト』)の脚本家でもあります。どのような形で彼女と一緒に仕事をなさる結果になったのか、お伺いしたいと思います。
監督:彼女(イサベル・ペーニャさん)は今のスペインが誇る、最高級の映画脚本家だと私は思っています。幸運なことに、私は長い付き合いがあり、マドリードの映画学校では一緒に教鞭をとることができました。実は、当時、二人で脚本を書いたことがあります。ただ、あまり良い脚本ではなく映画にはならなかったのですが、その時から「いつかは一緒に映画を撮りたいね」と話をしていて、今回それが叶いました。
実は、私はこれまでは、主にミュージックビデオなどを制作しており、劇場映画を監督したことはありませんでした。この映画の制作は、女性がディスコで点滅するライトの中で、誰だかわからない、見えない人に襲われるというシーンが浮かんだところから始まりました。そこからどのように展開すれば良いか悩み、彼女に相談したところ、物語の展開に関してたくさんのアイデアをもらうことができました。こうした経緯で、2人で映画全体の物語をどんどん書き加えていくに至りました。
アルベルトさん:映像のことについてもお伺いしたいと思います。美しく、印象に残る映像がたくさんありました。アイデアはどこから生まれましたか。
監督:脚本を書いていて、この映画は決してフィジカルな映画ではないと感じました。どちらかというとサイコロジカルな、人の頭の中で起きていることや、メンタルの部分を描いてる作品です。そのために、恐怖感や恐怖心を少しずつ足し、どんどん大きくなっていくという段階を踏みたいと思ったのです。そこで、映像も、フレームの中にすぐにぱっと出るわけではなく、少しずつ何かが見えてくるよう、ステップを踏む努力をしました。
アルべルトさん:他のキャストについてもお伺いします。特に、アンドレア役のエステル・エスポジートさんはスペインやアメリカでも活躍していらっしゃる俳優さんです。ペドロ監督の初映画監督作品に出演してしていただいた経緯をお聞かせください。
監督:エステル・エスポジートさんは、今のスペインでも最高の、有名な俳優さんです。 そのため、私たちにとっては本当に夢のような話だったのです。イサベルと一緒に脚本を書いてる段階から彼女が出演してくれたらいいなと思い、彼女を思い描きながらアンドレアのキャラクターを書きました。今回オファーして、実際に出演していただけたことは大変嬉しく思っています。また、彼女のSNSは、なんと2600万人ものフォロワーがいるので、そうした俳優さんが出てくださったことは、やはりこの作品にとって大きなプラスになると思いました。
アルベルトさん:ありがとうございます。
──Q:奇妙な建物は、何をイメージした、どのような比喩の具体化なのでしょうか。
監督:やはりホラー映画というと、お化け屋敷やホーンテッドハウスといったイメージがつきものです。 ホーンテッドハウスには、例えば辺鄙な丘の上に佇む、いかにも怖そうな、壊れかけの家というイメージがあります。私は、映画を観る皆さんに、リアルな感覚や恐怖心を持っていただきたかったので、世界中のどんな町・都市にでもありそうな、何の変哲もない少し古めかしいアパートや、マンションを使いたいと思っていました。そうした意味で、あの建物は、東京にあってもマドリードにあってもブエノスアイレスにあっても決しておかしくない建物を登場させました。
──Q:ビルのシーンでは、女性の霊のようなものが何人か出てきます。大量の女性を出したことに意味があれば教えていただきたいです。
監督:1人だけではなく、何世代にも渡って起きたということを象徴したかったからです。そのため、あの場面での女性は、その家族や一族の何世代も前の女性も同じような経験をしてきたということの比喩として何人も出しました。
清水PG:最後にゲストから一言ご挨拶をいただけたらと思います。
監督:あっという間に時間が過ぎてしまったのがとても残念です。もっと皆さんとお話ししたかったのに。ですが、皆さんに今日、私の作品をご覧いただき、気に入っていただけたのであれば、大変嬉しく思います。
マレーナさん:とても残念です。たいへん多くの方が手を挙げてくださったので、全員の質問を受けることができなくて残念でした。また機会がありましたら、ぜひ聞いてください。とにかく、今日は皆さんお越しいただきましてありがとうございます。