2024.11.02 [イベントレポート]
カザフスタンの俊英アディルハン・イェルジャノフ監督、人間ドラマとエンタメが融合した『士官候補生』の製作経緯を語る
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第37回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出された『士官候補生』が11月1日、丸の内TOEIで上映され、監督・脚本を務めたアディルハン・イェルジャノフ、俳優のアンナ・スタルチェンコ、シャリプ・セリックが上映後にQ&Aを行った。

本作は、映画『イエローキャット』などで知られる、カザフスタンの俊英アディルハン・イェルジャノフ監督の最新作。エリート士官学校を舞台に、学校でいじめを受けているシングルマザー、アリーナの息子セリックを通して、軍隊組織に内在する暴力や腐敗をホラー映画的な要素を加えて描く。

カザフスタンのアディルハン監督は、これまでカンヌ国際映画祭やベネチア国際映画祭に作品がそれぞれ2度正式出品された実績があるが「東京に来るのは夢でした。日本の文化も尊敬しているので、そんな場所で自分の作品が上映されるなんて、夢が叶ったような気分です」と挨拶した。

主人公の母・アリーナを演じたアンナも「ここにいることが大きな名誉です」と笑顔を見せると、捜査官役を務めたシャリプも、一生懸命日本語で挨拶をすると「僕も日本という国のファンなので、この場にいられることは大きな名誉です」と感激した表情で語っていた。

アディルハン監督の物語は、意外な展開でファンを魅了する。本作でも最初はシリアスな人間物語だったものが、後半になるとホラー的な要素になり作風が変わる。

アディルハン監督は「最初は母と息子の人間ドラマにしようと思って脚本を書き、それをカザフスタン最大の映画会社・タイガーフィルムに持ち込みました。タイガーフィルムは商業的な映画をメインにしている会社なのですが、私の作家性の強い脚本を気に入ってくれて、人間ドラマとエンタテインメント性のあるホラー的な要素が融合されたんです」と経緯を説明した。

Q&Aでは「チャプターごとにデカルトの思想が引用されている理由」や「映画のなかで時間軸が矛盾するようなシーンがあるのはなぜか?」、「被写体が中心ではなく四角に置かれている意図は?」などと鋭い質問が続く。

その都度、アディルハン監督は「ありがとうございます」と深く作品を認識してくれる観客に感謝しつつ、映画に“異質なものがある”という引っかかりを入れるための演出であることを明かしていた。

カザフスタンを代表する名監督に対し、アンナは「監督と仕事を共にするのは、俳優にとって大きな幸せなんです」と語ると「監督がしっかりと意味を持って作品を撮るので、我々俳優は何一つ怖がることがないんです」と絶大なる信頼感を伝える。シャリプも「監督は信頼して役を任せてくれる。スタッフ、キャストが一丸となってファミリーのように仕事ができました。とても素敵な作品に関わることができたことで、また私のキャリアに一つ誇れるコレクションができました」と感激していた。

第37回東京国際映画祭は11月6日まで開催。
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