2024.11.05 [イベントレポート]
エシカル・フィルム賞は『ダホメ』に決定 審査委員長の齊藤工「新鮮な映画文法」と絶賛
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エシカル・フィルム賞は『ダホメ』(監督:マティ・ディオップ)に決定

第37回東京国際映画祭「エシカル・フィルム賞」の授賞式が11月5日、メイン会場のひとつである東京ミッドタウン日比谷のLEXUS MEETS...で行われた。同賞は、映画を通して環境、貧困、差別といった社会課題への意識や多様性への理解を広げることを目的として、2023年に新設。東京国際映画祭にエントリーされたすべての新作から「人や社会・環境を思いやる考え方・行動」というエシカルの理念に合致する優れた3作品がノミネートされ、グランプリには『ダホメ』(監督:マティ・ディオップ)が輝いた。

本年度のワールド・フォーカス部門に出品されている『ダホメ』は、西アフリカのベナン共和国にかつて存在したダホメ王国から、フランスに接収された美術品が返還される過程を追い、植民地主義について考察するドキュメンタリー。24年・第74回ベルリン映画祭では、最高賞にあたる金熊賞を受賞している。授賞式には、ディオップ監督の代理として、株式会社アフリカ・ネットワークの代表であるゾマホン・スールレレ氏が駆けつけた。

今年のエシカル・フィルム賞は『ダホメ』に加えて、フランスで注目を集める過激な環境保護活動家たちのコミュニティを記録したドキュメンタリー『ダイレクト・アクション』(監督:ギヨーム・カイヨー、ベン・ラッセル/ワールド・フォーカス部門)、洪水に見舞われた世界を一匹のネコが見つめる『Flow』(監督:ギンツ・ジルバロディス/アニメーション部門)の3作品がノミネートされた。

審査は、俳優・映画監督で、撮影現場に託児所を設置するプロジェクトなどエシカルな活動を実践している齊藤工を審査委員長に、東京国際映画祭の学生応援団から選抜された佐々木湧人(筑波大学大学院1年)、縄井琳(国際基督教大学大学院1年)、河野はな(慶應大学3年)の3人が審査委員として議論が重ねられた。

齊藤は「審査は1時間半ほどかかった。自分なりの順位もあったが、学生の皆さんと話しているうちに、順位も変わった。角度を変えると、どれもグランプリにふさわしい」と白熱の審査を振り返り、「審査会を通して、作品が熟成されていき、その真意に迫れた。非常に有意義で、すばらしい審査だった」と語った。

グランプリに輝いた『ダホメ』については、「フランスの美術館から、美術品が故郷に返還される内容で、フランスが製作に入っているという皮肉的な事実に映画のジャーナリズムを感じる」とし、「そんな作品に、日本の映画祭が賞を与えることの意味合いも含めて、エシカル・フィルム賞にふさわしい」と受賞理由を説明。ディオップ監督の前作『アトランティックス』にも触れながら、「ジャンルレスで見たことのない作風。フィクションなのか、ノンフィクションなのかも曖昧で新鮮な映画文法」だと絶賛していた。

第37回東京国際映画祭は、11月6日まで開催。
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